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2022/04/18 18:36
糖質制限ダイエット
糖質制限ダイエットは、カロリー制限ダイエットに比べてまだ提唱されてからの歴史も浅く、研究が進んでいる段階ですので、現時点で分かっていることを要約するかたちでお話しします。糖質制限ダイエットを行うと、普段炭水化物を普通に食べていらっしゃる殆どの方は、(恐らく人によっては、短期間に劇的に)体重を落とすことができると思います。(遺伝的な傾向や体質によっては、効果が現れにくい方もあります。)
面倒臭い話を割愛して簡単に説明すると、食後に血糖値が上がるとインスリンが分泌され、筋肉や肝臓などにブドウ糖を送り込みますが、余剰分は中性脂肪として蓄えられてしまいます。
中性脂肪が蓄えられることが、太るということです。
更に、血糖値を急激に上げてしまう生活習慣などが原因で、インスリンの働きが悪くなり、血液の中に糖が多い状態、つまり血糖値が高い状態が続くと、糖を尿で排出しようとして、糖尿病とういうことになってしまいます。(かなりの略で、すみません。)
いずれにしても血糖値を上げるのは糖質ですから、糖質≒炭水化物を制限して、血糖値を上げないようにすることは、糖尿病の患者さんだけではなく、痩せたい人にとっても有効な手段であるというわけです。
糖質制限ダイエットでは、糖質は制限しますが、食べてもほとんど血糖値が上がらない脂質やタンパク質の制限はなく、カロリー計算も必要ありません。
ですからダイエット中であっても、霜降り牛をお腹いっぱい食べるというようなことも、基本的にはOKということになっています。
一方、ご飯、麺類、パンや甘いお菓子、果物や、野菜でもイモ類、カボチャはNGですし、糖質が比較的多いニンジンやトマトなどにも注意しなければなりません。
糖質制限ダイエットで痩せるのは、エネルギーを血糖からではなく、脂質を分解して生み出すことになるので、脂肪が消費され体重が減るというメカニズムだけでなく、食欲を介するホルモンにも変化が起こり食欲自体が落ちることも一因なのだそうです。
また、糖質以外の制限はないものの、実際にはお肉などの動物性タンパク質や油脂は、それほど沢山食べることができないため、結局は総摂取カロリーが抑えられるようです。
炭水化物は1gあたり4kcal、脂質は1gあたり9kcalですが、一般的な日本人の食生活での炭水化物摂取量は、総摂取カロリーの55~60%程度と言われていますので、差し引きすると摂取カロリーが減ることが多いようです。
糖質制限ダイエットの利点をまとめると、
★ 体重が減る
★ 血糖値やインスリンが殆ど上昇しない
★ 善玉コレステロールが増え(るか、又は減らさない)、中性脂肪が減る
★ 食欲が抑えられる
ということがあります。
メリットがたくさんあるダイエット法のようですが、しかし実は、一日の炭水化物摂取量を130g以下に抑えるような厳しい方法をとると、様々な危険な状況がうまれてしまいますので、適切な方法で行うことが重要です。
厳しい糖質制限ダイエットのリスクと実践する際の留意点
糖質制限とカロリー制限ダイエットに関する、数万人を10年以上にわたって追跡調査する大規模なコホート研究が、これまで世界で6つ行われています。それらの研究は、現時点では「厳しい糖質制限ダイエット」は、減量や血糖値の改善などの結果が早く現れるものの、長期にわたって行うと、厳しくすればするほど死亡危険度が高まってしまうことや、「ゆるやかな糖質制限ダイエット」ではその危険性が認められないと結論しています。
「厳しい糖質制限ダイエット」とは、一日の炭水化物の摂取量を130g以内、場合によっては食事から極力炭水化物を排除して、50g以下にするような方法を言います。
癌、脳と心血管障害による死亡が増加しますが、この原因は、炭水化物に置き換える赤肉とその加工品(ハム、ソーセージ、スパムなど)の摂取が多くなるからなのではないかと考えられています。
これまで脂質が危険因子のように言われることが多かったのですが、最近の研究では、脂質は動物性のものであっても、多めに取っている人の方が死亡率が低いことが明らかになっていて、この場合にも問題になるのは、脂質ではなく赤肉のタンパク質の方なのだそうです。
また、糖質制限ダイエットによって、血管障害の発症原因(中性脂肪、コレステロールなど)は改善できますが、長期にわたって厳しく行った場合は、喫煙など他の理由で血管障害を起こしてしまった場合に、組織を修復する再生能力が大幅に減っているためではないかと言われています。(ハーバード大学の循環器・幹細胞研究グループ)
更に最近は死因の変化により、BMI=体重÷(身長)? が、男性で23~27、女性で22~30くらいのプチ・メタボな人の方が、疾病と戦う体力があるので結果的に長生きになるという背景もあり、痩せすぎてしまうことが死亡のリスクを高めてしまうようです。
ですから、ゆるやかな糖質制限ダイエットが推奨されていて、
?炭水化物の摂取量を40~45%程度にして、減らし過ぎないこと。
?もしも結果を早く出したいなどの理由で厳しく行うなら、数か月程度にとどめ、少しずつ炭水化物の摂取量を増やすこと。
を守って行うのが安全です。
ゆるやかな糖質制限ダイエット
「ゆるやかな糖質制限ダイエット」には、毎回の食事から少しずつ炭水化物の量を減らす方法(アメリカでよく用いられる)と、3度の食事のうち1~2回だけ炭水化物を抜く方法(日本でよく用いられる)があります。どちらのやり方が良いのかはっきりしていませんので、ライフスタイルや性格、食の嗜好に合わせて選択されるのが良いと思います。
毎食必ず主食にご飯や麺を食べたい人は、少しずつ炭水化物の量を減らす方が良いですし、一度の食事だけ炭水化物を取らないと決めた方が自己管理が簡単な人には、後者をおすすめします。
炭水化物を抜く食事の回数で、危険性がないのは1~1.5回とされているので、特に糖尿病などで血糖値の改善が必要な人でなければ、1回だけ抜くのが安全な方法といえるでしょう。
1食だけ炭水化物を抜く場合は夕食で実行するのが良く、2食ならば夕食と朝食で実行するのが良いと一般的に言われています。
昼食はどうしても炭水化物中心のメニューになりやすいこともありますので、その観点からも昼食には炭水化物を制限しない方が現実的かもしれませんが、長続きさせるためにも、柔軟にその日のスケジュールに合わせて変更しても良いと思います。
糖質制限ダイエットの仕組みについて少しお話しておきます。
ヒトは炭水化物を最後に食べてから10時間は、エネルギー源として血糖をつかいます。血糖がなくなると、今度は脂質を分解して、肝臓でケトン体という物質(と脂肪酸)をつくりエネルギー源にします。
このケトン体をエネルギー源として使用している間は、脂肪が消費されています。
例えば昼の12時に炭水化物を食べた場合、夜の10時頃から、エネルギー源が血糖からケトン体に変わります。夕食で炭水化物を制限して、翌朝7時に朝食で炭水化物を食べたとすると、22時から7時までの約9時間はケトン体で生活しているということになります。
ですから厳しい糖質制限時には、体内のケトン体の濃度が高いのですが、ケトン体に関しては未解明の部分も多く、現段階で安全性に関してよく分かっていない状況です。
ところで糖質制限ダイエットを行うためには、どんな食品に糖質が多く含まれるのか知っておく必要があります。
糖質の多い食品は、ご飯、麺類、パンなどの主食になるもの、いも類、カボチャ、トウモロコシ、栗、柿、バナナ、ドライフルーツ、梨、グレープフルーツ(意外!)、甘いお菓子(和・洋どちらも)、甘い調味料(カレールー、シチューなど)、日本酒、ビール、甘口ワイン、梅酒、清涼飲料水などがあります。
糖質の多い日本酒ですが、日本酒度が7度以上の辛口は糖質が少ないので、糖質制限ダイエットでは飲んでも構わないことになっています。
アルコールでは、焼酎、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、ジン、糖質0ビールはOKです。
ワインも日本酒と同様に、辛口の場合は糖質が少ないので飲んでもOKで、不思議なことに飲酒後の血糖値は上がらないか、むしろ少し下がるそうです。
しかしアルコールは多飲すると肝臓に負担になりますし、カロリー摂取量も増えるので気を付けてください。
それ以外で特記することは、アボカドを除く果物には糖質が多いので、食べる量を考慮した方が良いということと、乳類ではチーズ、生クリーム、ココナツミルク、植物性油脂、バター、ラードには糖質は少ないのですが、牛乳やヨーグルトでは糖質が少し高めになりますので、糖質を抜く食事をする際には気を付けた方が良いということです。
ダイエット調査の結果
下のグラフは開始から2年間の「カロリー制限ダイエット」、「糖質制限ダイエット」、「地中海式ダイエット」の体重変化を示したものです。この研究では、各ダイエット法を次のように設定しています。
<カロリー制限ダイエット>
アメリカ心臓協会のガイドラインに基づき、一日の総摂取カロリーを、女性で1,500kcal、男性で1,800kcalとし、脂質は摂取カロリーの30%にする。
低脂肪の穀物、野菜、果物、マメをよく食べ、脂質とお菓子や高脂質のスナックを控える。
<糖質制限ダイエット>
アトキンス・ダイエットに基づいた方法を取り、カロリー、脂質、タンパク質の摂取量は全く考慮しないが、最初の2ヶ月は炭水化物を極力減らし、その後段階的に一日120gまで増やしていく。
トランス脂肪酸を避け、植物性の脂質とタンパク質の摂取を推奨。
<地中海式ダイエット>
野菜を多くとり、赤肉(牛肉やラム肉)を鶏肉や魚介類に置き換えることで、赤肉の摂取を減らす。一日の摂取カロリーは、女性で1,500kcal、男性で1,800kclにし、脂質が摂取カロリーの35%を越えないようにする。
毎日30~45gのオリーブオイルと、一握り(約20g)のナッツをとる。
糖質制限ダイエットの体重減少は大きいので、早く結果を出したい方には良いかもしれません。
ただこの調査では糖質を厳しく制限しているようですし、このようなダイエットの場合、最初に減るのは、糖質をグリコーゲンとして蓄えておくために必要だった水分、という情報もありますので、体重が減少したところで気を抜かない方が良いかもしれません。
カロリー制限と地中海式ダイエットは、途中まで同じような動きを示すものの、リバウンドの仕方が違うようです。
摂取カロリーや野菜をよく食べることなどは同じですので、もしかしたら、脂質は制限するよりも、むしろオリーブオイルやナッツでとった方がリバウンドしにくいということでしょうか。
やはりダイエット法は、個人の性格や年齢、生活習慣に合わせて選択して、長続きするやり方で行った方が良いという当たり前の結論ですが、地中海式ダイエットの中にはいくつか参考になる考え方がありますので、役立つアイデアをご紹介しながら、より良い食べ方について考えてみたいと思います。

糖質制限と年齢
アンチエイジングやダイエットに有効と、最近話題の糖質制限。
糖質制限は、体質によっても効果の表れ方が違いますが、年齢によっても適応があるようです。
東京医科歯科大学名誉教授、人間総合科学大学教授の藤田紘一郎先生によると、若い頃(人によって違いがありますが、50歳前後が分岐点になるようです。)と、中高年以降とでは、使うエネルギーが違うのだそうです。
若い頃は「解糖エンジン」を使い、中高年以降は「ミトコンドリアエンジン」を使います。
若い頃は主に糖質をエネルギーとして使いますので、炭水化物を制限してもあまり意味がないだけでなく、危険なことかもしれません。
炭水化物を食べないと、使うエネルギーが不足し、健康にも影響があるかもしれないので、若い皆さんはくれぐれも無理な糖質制限ダイエットをしないで、良質な炭水化物を食べてください。
デュラム・セモリナのパスタや全粒粉のパンなど、あまり精製していないものは特におすすめですが、ご飯もAGE値が少ないという意味ではおすすめです。
逆に、中高年以降に若い頃と同じように炭水化物を取っていたら、太ったり老化の原因になってしまうかもしれません。